香月啓佑(記)
本の未来基金は青空文庫を技術的に支えるエンジニアコミュニティである「aozorahack」の活動を支援しています。その一環としてaozorahackのオープンソースカンファレンスへの出展にかかる費用(旅費・宿泊費、印刷費)を補助しています。
OSCは「オープンソースの今を伝える」をテーマに開催されているテックカンファレンスで、2004年から続けられているイベントです。東京だけでなく全国各地で開催されており、オープンソース(OSS)に関する企業やコミュニティがブース出展をしたり、セミナーを実施したりなどを通じて交流を深めるイベントとして定着しています。
aozorahackは2015年の秋からブース出展とセミナー開催を実施しています。これは青空文庫のサーバ移転に関するアイデアソンをきっかけに集まった技術者のみなさんが集まれる場所を作ろうということがきっかけでした。
これまでにaozorahackが出展・セミナーを実施したのは下記の通りです。
2015年(秋)、2016年(春・秋)、2016年(春)、2017年(春・秋)、2018年(春・秋)、2019年(春・秋)
2018年
OSCでのaozorahackのブースでは青空文庫のデータを用いた電子書籍や紙の絵本、青空文庫に関連する書籍などを展示して、ブースに足を止めてくださる方とのコミュニケーションを行っています。足を止めてくださる方のほとんどは青空文庫のことを知ってくださっており、どのような仕組みで青空文庫が運営されているのかなどが話題になります。その際には青空文庫のデータの作られ方(入力、校正、点検のプロセス)やその裏で動いているバックエンドのシステムのしくみなどを実際のサイトやCSVを見ながらお話しています。また青空文庫ならではの話題としては文字コードの話題もしばしば。JIS Xや包摂基準、外字の取り扱い方などの話は盛り上がることも多いです。
ブースではaozorahackのチラシや青空文庫ロゴのステッカーも配布しています。ステッカーは人気アイテムで現在在庫切れですが、次回の参加までには刷り足そうと考えています。またお子様連れの来場者に人気なのが河野悦昌さん(秘密結社オープンフォース)のお手製の青空文庫データを用いた絵本。これは青空文庫に収録されているビアトリクス・ポターの「あなうさピーターのはなし」(原題:THE TALE OF PETER RABBIT、翻訳:大久保ゆう)をレイアウトして紙に印刷したもの。挿絵付きなので子どもに大人気なのですが、その挿絵や翻訳の著作権に関する話のネタとしても役立っています。絵本を通じて青空文庫には著作権保護期間の切れた絵本も収録されていること、著作権存続中の作品も掲載されていること、そしてパブリックドメインの持つ「自由」の形のひとつを知っていただくことができています。
セミナーでは毎回「aozorahackと青空文庫の現状とこれから」を話す45分のセミナーを開催しています。内容は毎回変わりますが、セミナーの流れとしては、aozorahackはどういうものかという説明、活動内容や青空文庫の技術的なトピックの解説、そして質疑応答が定番の流れです。また著作権保護期間延長問題や世界のパブリックドメイン活用の現状に関する解説も行ったこともあります。セミナーにはaozorahackに多大な貢献をいただいている高橋征義さんにいつも登壇をいただいています。発表資料のうち今読んでも面白いものを2つ下記にご紹介します。
aozorabunko_textと青空文庫の外字(高橋征義さん / aozorahack,達人出版会)
青空文庫テキストフォーマットについて (高橋征義さん / aozorahack,達人出版会)
aozorahachは現在、高橋征義さんや宇谷有史さん(株式会社ブクログ)を中心に現行システムの改修やメンテナンスを行っています。OSC出展には河野悦昌さんのお手伝いをいただいています。またハッカソンで形になった青空文庫CLIやPubserverなどは折に触れてaozorahackのGitHubレポジトリでメンテナンスが行われています。佐藤健一(ksato9700)さん、清田恭弘(yasuhiroki)さん、ありがとうございます。この場を借りて御礼申し上げます。
ただ将来の青空文庫の姿を示せるような活動ができていないのも現状です。2020年の今年はまずは本の未来基金サイトの改修(なんらかのCMS導入)を実施し、その上でなにか一つでも新しい仕組みを入れ込んでいければいいなと考えています。おかげさまでaozorahackのSlackには少しづつ参加してくださる人も増えてきています。ぜひなにかアイデアのある方はご提案をいただければ幸いです。
上述の通りOSCへの出展にあたっては本の未来基金にお寄せいただいた寄付金を活用させていただいております。本の未来基金に寄付をお寄せくださったすべての皆様に感謝いたします。
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